弊社は、国内外100社以上のお客様と商談をさせていただいてきましたが、たまに話題になるのが火災事故です。
電源ケーブルから煙が出た、発火した、というレベルでしたら皆さん経験していると思いますが、消防車が出動するレベルの火災もときどき耳にします。
実は私自身も、マイニングファームの火災現場に立ち会ったことがあります。
場所は石川県の能登半島です。
このファームは、Antminer S9を400台稼働していたのですが、2018年の暑い季節にボヤを出しました。
実際は2~3台が焦げただけで大した火事ではなかったのですが、駆け付けたスタッフがパニック状態になってしまい、消火剤をほとんどすべてのマシンにぶちまけてしまいました。
そしてその消火剤が燃えていないマシン内部にも入り込んでしまいました。
しかも火事のあと6か月以上も放置しておいたことから、内部がサビてしまい、使い物にならなくなってしまったのです。
その被害額は、マシンだけで3億円近かったそうです。
400台で3億円?と思うかもしれませんが、購入当時はAntminer S9にプレミアがついていて、1台80万円はしたのです。
しかも保険に入っていなかったので、3億円のうち1円も返ってきませんでした。
と、このように、もしもの時に備えるための準備が出来ていないマイニングファームは、まだまだ日本各地にも少なからず存在しています。
災害リスクを怠っていると万が一の事態が起きた際に、利益を得るどころか多大な損失を被る可能性があることを忘れてはいけません。
そこで本記事では、海外の事例などを交えながら火災リスクの事前対策についてご紹介していきたいと思います。
尚、マイニングファームの保険についても弊社でご提案できます。主に東京海上の火災保険をご紹介いたします。詳しくはこちらからご連絡下さい。
マイニングファームとして火災が起きた場合の損失を把握しよう
まずはマイニングファームで火災が起きた場合のリスクについて、説明いたします。
マイニングマシンの損失
火災が起きた場合に最も被害が広がりやすく、損害額が大きくなってしまいがちなのがマイニングマシン本体になります。
原因としては、マイニングマシンのメンテナンス不足や発熱、電源の異常により発火する可能性が高いため、発火地点より近いことから被害は大きくなってしまいます。
マイニングマシンは高額な物が多く、マシン自体の損失額はもちろん、火災後の稼働停止期間も考え、機会損失の大きさも考慮に入れておく必要があります。
大規模火災となるとマイニング施設自体の損失も
マイニング施設の火災では、マイニング機器を密集させているケースも少なくないため、一度火災が発生すると施設ごと焼失してしまうような大規模火災となるケースもあります。
大規模火災となってしまった場合には、マイニング機器の全焼は避けられず、施設自体の賠償責任に繋がる可能性も高くなるため、万が一の事態への対応として火災保険の加入は必須と考えておくべきでしょう。
マイニングファームで発生する火災の原因とは
マイニングファームで発生する火災の原因にはいくつかの要因となる問題があり、下記で3つの原因についてご紹介していきたいと思います。
マイニングファームは、マイニングに特化した施設として設立する分、自宅でマイニングを行うことに比べると人的被害は低くなることが多いですが、運営する企業としては設立後も下記で紹介する内容を中心にしっかりと気を配ることが重要です。
冷却不足による発火
マイニングでは最大効率で採掘作業を行えるように、マイニング機器を1日中フル稼働させて運用を行うケースがほとんどです。
マイニング機器は通常のコンピューターよりも発熱量が高く、1日中稼働させているとかなりの熱量を本体が保持することになるため、空調や、ファンなどの設備には十分に投資する必要があります。
特に日本でマイニングしている方は、夏場は要注意です。換気が不十分な部屋ですと、すぐに室温が50度、60度と上がってしまいます。
北海道や東北ならまだいいのですが、関東、近畿、九州地方などは屋外でも40度くらいまで上がりますので要注意です。
外気が40度あるなかで、空調が不十分なファームでマイニングするとマシンが駄目になるだけでなく火災の原因にもなります。
マイニング機器の選定では、採掘効率を上げるために電源のパワーを最優先にされがちですが、同じくらい空調設備の性能にも投資するようにしましょう。
可燃物が近くにあることによる不注意
人為的なミスなどで訪れる火災の原因として、可燃物が近くにあり発火してしまうケースが見られます。
当初マイニングファームを建設する際には、可燃物をマイニング機器の近くに置かないように多くのマイナーが意識して配置を行います。
従業員への徹底した教育はもちろん、可燃物をマイニング機器が設置された部屋に持ち込まないなど、ルール作りをしっかりと行うことも重要です。
掃除や手入れ不足によるホコリが原因での発火
マイニング機器の配置や冷却設備を万全にしていても火災が起こることもあります。
中でも原因として多くあがるのは、ホコリが原因の火災です。
ホコリは意識していても発生しやすく、また発火しやすいため、常に掃除や機器の手入れを行い、火災を未然に防ぐためにホコリのかたまりを作らないように定期的なメンテナンスをすることが重要になります。
マイニングファームが行うべき火災リスクへの対策とは
ここからはマイニングファームが行うべき火災リスクへの対策方法をご紹介していきます。
火災が起きてからでは遅いため、事前に出来る限りの予防策及び万が一火災が起こってしまった場合の被害拡大を防ぐ事前準備をしておきましょう。
施設の手入れと従業員への意識を徹底する
火災の原因で紹介したように、ホコリの混入を未然に防ぐこと、可燃物をマイニング機器の周辺に置かないことを意識するため、施設の手入れと従業員への意識を徹底することは欠かせません。
きちんとルールを定めた上で毎日の作業として仕組み作りを行い、従業員が変わった場合でも問題なく運営出来ることが理想となります。
消火器やスプリンクラーの設置
上記では火災を防止するための方法をご紹介してきましたが、火災が万が一発生してしまった場合の対策を行なっておくこともリスク防止には不可欠です。
手軽に出来る消化器の設置からスプリンクラーの設置まで、火災が起きてしまった後の被害を最小限に抑えるための事前対策も出来る限り行なっておきましょう。
消化器については、精密機械用の消化器を準備するとよいでしょう。小さなボヤでしたら精密機械用のマイニングマシンがお薦めです。
一般的な消火剤は精密機械には有害で、ボヤを出していないマイニングマシンにかかると故障の原因にもなります。しかし精密機械用の消火剤なら、多少マイニングマシンに噴霧しても壊れることはありませんのでお薦めです。
またスプリンクラーのような装置を設置するのは費用も掛かりますが、施設が全焼してしまっては元も子もありませんので、出来れば準備しておいた方が良いでしょう。
過去に起きたマイニングファームの火災事例から予防策を学ぼう
過去に起きたマイニングファームの火災事例についても合わせてご紹介しておきます。
2019年には中国大手マイニング施設「Innosilicon」でも火災事例が確認されており、規模を問わずマイニングファームでは火災リスクをしっかりと把握しておくべきであることを再認識させられるニュースとなりました。
中国大手マイニング施設Innosiliconでの火災
中国大手マイニング企業のInnosiliconでは、2019年に中国国内の同社のマイニング施設において、大規模火災が発生したことが報告されています。
報告によると1000万ドル(約11億円)相当のマイニング機器が損失したとされ、火災の規模がどれだけ広がってしまったのかを象徴しています。
今回のInnosiliconの火災の原因については残念ながら詳細が発表されておりません。
一部報道では、配線不良及び電源ユニット(PSU)の不良が原因による火災とも掲載されております。
中国国内で報告されたマイニング施設の災害報告は過去にもいくつかあり、中国北西部四川省では、雨季が原因でマイニングファームの災害が度々起きていることも報告されています。
マイニング企業としては、マイニングファームを建設する地域の気候による災害へのリスクも十分に考慮する必要があります。
タイのマイニング施設で大規模な火災被害
2014年にはタイに建設されていたマイニング施設で大規模な火災被害が起きたことも当時の一大ニュースとなっています。
損害の程度は明らかになっておりませんが、200万ドル(約2億2千万円)以上の設備が被害を受けたとされています。
冷却設備や配線設備には問題なかったのかとの疑問には、メーカーのCEO Guy Corem氏が冷却設備の問題ではないことは確認済みであると回答しています。
一方で、配線設備に関してはマイニング周辺機器設置後の調査が不十分だったとされており、品質を保証することが出来ませんでした。
また、火災の規模が大きくなってしまった要因として、換気口の構造で火災に燃料を供給する形になってしまい規模が拡大した可能性があることも示唆されています。
さらに、マイニング業者では施設の費用を採掘したビットコインで支払っており、施設と機械に保険を掛けていなかったため、莫大な損害が出たことが報告されています。
過去の事例から学ぶ災害リスクへの予防と対策とは
上記の事例でご紹介してきた通り、マイニングを専門として扱う大規模施設でも幾度か火災被害が生じてしまっているのが現状です。
火災の原因が不明となっている事故も多く、中には放火の可能性が捨てきれない事例もあるようです。
まず予防策としてマイニング機器の冷却性能チェックと周辺機器の品質チェックを行うことをお勧めします。
また機器の配置についても入念な打ち合わせを行い、火災リスクを最小限に抑えるために最善を尽くすようにしましょう。
タイの事例のように保険未加入の状態で火災などの災害が発生すると、損失額は予想以上に大きくなってしまいます。
万が一のための保険ですが、特に高価なマシンを導入するときは、加入することをお薦めします。
さいごに:マイニングファーム運営において火災リスクへの対策は必須
本記事では、マイニングファーム運営において火災リスクへの対策と事例をご紹介してきました。
現在マイニング施設を運営している方はもちろん、これからマイニング施設の運営を考えている方にもぜひ火災リスクの予防と対策には入念に準備して頂きたいと考えています。
万全の準備をしようと思うと費用や時間も掛かってしまうことは事実ですが、火災で全てを失ってしまってからではどうしようもありません。
事前にしっかりと対策を行い、火災リスクを最大限に小さくするよう運営者として対策しておきましょう。
マイニングを始めたい方や、機器を購入したい方はこちらからお問合せをどうぞ