マイニング事業者が知っておきたい基礎知識。Bitmain(ビットメイン)社ってどんな会社?創業者の経歴、製品、経営状態からIPOや将来性まで徹底解説 – マイニングマシン買取

マイニング事業者が知っておきたい基礎知識。Bitmain(ビットメイン)社ってどんな会社?創業者の経歴、製品、経営状態からIPOや将来性まで徹底解説

 

マイニングハードウェアの最大手として名前の挙げられることの多いBitmain社ですが日本語での解説情報はそれほど多くありません。

そこで本記事では、マイナーなら必ず押さえておきたい情報として業界最大手であるBitmain(ビットメイン)社の基礎知識を会社概要から最新動向まで徹底解説していきたいと思います。

 

企業概要

 

Bitmain社は2013年に「Jihan Wu(ジハン・ウー)」と「Micree Zhan(マイクリー・チャン)」により設立されました。

ビットコインマイニング用のASIC(特定用途向け集積回路)設計と製造を主な事業としています。

中国の北京を拠点としており、現在では、香港、アムステルダム、サンフランシスコ、テルアビブ、青島、上海、深セン、成都に子会社を展開しています。

また、Bitmain社ではマイニング用ハードウェアの設計・製造以外にも「BTC.com」と「Antpool」という2つのビットコイン最大規模のマイニングプールを運営しています。

BTC.comは世界中でマイニングされているブロックの15%を占めているとされており、マイニングプールとしては世界第1位のシェア率を誇ります。

また、Antpoolに関しても11%のブロック占有率を誇っているため、Bitmain社の運営するマイニングプールだけで世界中でマイニングされている1/4以上のブロックが生成されている計算となります。
※2019年10月現在、同じく中国の大手マイニングプールF2Poolのシェア率増加により、勢いは以前より落ちてきているようです。

 

Bitmain社の経歴とは?

 

Bitmain社は2013年に設立されて以降、2013年11月に完成した「Antminer S1」を皮切りに自社ASIC製品でマイニングハードウェア業界を席巻していきます。

 

創業時から仮想通貨ブーム到来以前(2013~2016年)

 

S1の売り上げは好調でしたが、2014年に起きた仮想通貨取引所Mt.GOXの破産手続開始により仮想通貨業界全体に低迷期が訪れました。

Bitmain社も仮想通貨低迷期の影響を受けましたが、Antminerの新シリーズ開発を続けており、2015年以降はビットコイン価格の回復と共に需要の増加も相まって「S5」〜「S9」とシリーズの中でもヒットモデルを次々輩出していきます。

 

仮想通貨ブーム到来(2017年〜2018年初旬)

 

2017年にはビットコインマイニングで世界最大のコンピューターチップ企業に成長しており、Bitmain社の売り上げは25億アメリカドル(約2,700億円)にまで到達しました。

2017年のニュースとしてはビットコインからハードフォークして作成されたビットコインキャッシュが生まれた経緯についてもBitmain社は大きく関わっています。

 

 

Bitmain社も大きく関わりのあるビットコインキャッシュ誕生

 

ビットコインではユーザーの増加により、送受信や取引に遅れが生じるようになってきていました。

ビットコインではライトニングネットワークを活用してオフチェーンの取引(取引の最初と取引完了時のみをブロックチェーン上に記録)を行うことで、高速に送金を行う手段を構築する方針を持っていました。

しかし、オフチェーン取引が増えるとオンチェーン上での取引のように全ての取引が記録されるわけではなくなるため、マイニングの収入に関しては減少することに繋がります。

マイニングの収入が減少するとマイニングプールに参加するユーザーも減ってしまい、悪循環になっていくことも懸念されていたことから、マイナーとしてはブロックサイズ拡張案を検討し始めていました。

Bitmainを含めた中国のマイニング企業ではブロックサイズを拡大させたいと考えていたこともあり、ブロックサイズを元の「1MB」から「8MB」へ拡張させる案を最初に提案したのがBitmain社となります。

実際にビットコインキャッシュ誕生となるハードフォークは2017年8月1日に実施されています。

※ビットコインキャッシュは2018年に再度「ビットコインキャッシュ」「ビットコインSV」にハードフォークされていますが、2018年の分岐は32MBまでにサイズ上限を抑えたいBitmain創業者のJihan Wu氏を含めた「ビットコインキャッシュ」派と128MBまで更なるサイズ拡張を提唱するオーストラリアの科学者Craig Steven Wright氏ら「ビットコインSV」派での内戦と呼ばれています。

 

 

2018年前半は仮想通貨相場とは対照的な過去最高売り上げへ(2018年上旬)

 

2018年の1月〜6月の売り上げは前年通算の25億ドル(約2,700億円)を超える28億ドル(約3,100億円)を半年で記録し、仮想通貨相場が下落した後も前年を超える売り上げがわずか半年間の間で発生していたことになります。

2018年時点で作成された後述する香港IPO目論見書に関しても、多くの投資家の仮想通貨市場下落による懸念を払拭するに値するような売り上げ記録が公開されていました。

 

仮想通貨市場価値下落の並には逆らえず急激な業績悪化へ(2018年中旬~)

 

しかし2018年中旬以降、再び仮想通貨全体の低迷期に突入し、売り上げが激減したことによる影響か2018年12月には全社員の半数に該当する1,500人規模の社員を解雇する事態となりました。

また、イスラエルとオランダに展開していた事業所を閉鎖し、アメリカのテキサス州のマイニング事業に関しても大幅に縮小することとなります。

一部噂によるとBitmainは2018年の第三四半期で5億ドル相当の金額を失ったとされています。

 

仮想通貨市場が復活の兆しを見せるも香港IPOは断念せざるを得ない状態に(2019年前半~)

 

2019年に入ってからの動きとしては2019年3月に香港IPOの申請を断念したことが挙げられます。

IPOの当初の目論見書では、2018年上半期で7億4000万ドルの利益計上を予定していました。

しかし2018年以降の売り上げ下落を始め、香港規制当局からは仮想通貨関連のビジネスに関して、業界全体での制度に欠如があると考えていることから承認することは難しいだろうと推察されており、今回の申請有効期限満了という結果に至ったようです。

Bitmainは今回のIPO断念に関して「将来適切な時期に再度上場申請を行うつもりだ」とコメントしています。

 

世界最大規模のマイニングファーム設立を発表(2019年後半~)

 

施設の動きとしては、アメリカ・テキサス州に世界最大規模のマイニングファームを建設したニュースについて挙げられます。

上述しましたように、2018年時点で仮想通貨全体の価格下落からテキサス州のマイニング事業についても縮小を余儀なくされていましたが、2019年からのビットコイン価格上昇に伴い、再び世界最大規模のマイニングファームを建設する流れを加速させ、2019年10月に今後の規模拡大予定は残した状態ですが完成し公開する運びとなりました。

 

2019年10月Micree Zhan氏解雇の衝撃ニュースが!

 

2019年10月には共同創業者の1人であるMicree Zhan氏がBitmain社を解雇されたとのニュースも入ってきています。

記事執筆時点では詳しい情報がまだまだ不足していますが、今後Bitmain社の活動に大きな影響を与えることは間違い無いでしょう。

 

創業者について

 

Bitmain社の創業者は「Jihan Wu」と「Micree Zhan」の2名です。

それぞれの経歴を簡単にご紹介していきたいと思います。

 

Jihan Wu

 

Jihan Wuは北京大学で経済学と心理学を学び、卒業後はBitmain設立以前に金融アナリスト及びprivate equity社のマネージャーとして活動していた経歴を持ちます。

ビットコインとは2011年5月に始めて出会い、ビットコイン愛好家であるChang Jiaと共に、2011年に中国初のビットコインコミュニティである「Babite」を設立しました。

また、ビットコイン創設者とされるサトシナカモトのビットコインホワイトペーパーを最初に中国語に翻訳した本人でもあります。

Bitmain社では主にビジネス方針の決定権を握っている人物でもあります。

 

 

Micree Zhan

 

Micree Zhanは、清華大学の情報技術研究所でエンジニアとして勤務したのち、セットトップボックス経由でコンピューターとテレビを繋げるハードウェアの製造ビジネス「DivaIP」を運営していました。

2013年にJihan Wuと出会い、ビットコインに関する調査と議論の結果、現在まで続く「Bitmain」を立ち上げることに同意しました。

ビットコインマイニング企業として世界一となったBitmain社の株式の内、2018年時点で36%をMicree Zhan氏が保持していると公開されています(Jihan Wu氏は20%)。

一方で、2019年10月29日Micree ZhanがBitmain社を解任されたことが発表されており、Zhan氏保有の株式についてどのような状態になっているのかについては執筆時点(2019年10月31日現在)では明らかとなっておりません。

 

Bitmain社のマイニング製品

 

Bitmain社が提供しているマイニング製品としては「Antminerシリーズ」が有名です。
Antminerシリーズの中でも最大のヒットモデルとなった「S9」とBitmain社最新モデルS17についてご紹介していきます。

 

Arnminer最大のヒットモデルS9とは?

 

Antminer S9は2016年6月12日にリリースされた製品で、1,375Wの消費で14TH/sのハッシュレートを記録しており、発売当時ではASICの中で最高スペックと呼べるモデルでした。

ビットコインが盛り上がりを見せる2016年後半~2017年のタイミングでBitmain社の主力商品だったこともあり、Antminerシリーズの中でも最大のヒットモデルと呼ばれる売り上げを記録しています。

S9シリーズはその後もアップデートが繰り返されており、2019年6月に発売された「S9 K」「S9 SE」が現在のS9シリーズ最新モデルとなり、「S9 SE」では16TH/sのハッシュレートを記録しています

 

Artminer最新モデル S17のスペックは?

Antminerシリーズの2019年10月時点最新モデルS17は、2520Wの消費で56TH/sのハッシュレートを記録しています。

S9のオリジナルモデルと比較すると電力消費量も2倍の数字となっていますがTH(テラハッシュ)については4倍の数値に上がっており、収益性が数段階上がっていることをご確認いただけます。

 

 

Bitmain社の将来の展望は?

 

Bitmain社はテキサス州での大規模マイニングファーム建設に関して、最終的には300メガワット規模の施設を完成させる予定であることを発表しています。
300メガワットはアメリカ家庭の使用電力24万戸分にも相当する大規模なものです。

Bitmain社では、順を追ってマイニング施設の規模を拡大していく予定と公表しています。

次の拡張段階である50メガワットのマイニング施設では、Bitmain社の最新ASIC「Antminer S17Pro」を利用して1年間稼働させた場合、現在のビットコイン価格でおよそ80億円規模の利益が出るものと推察されています。

また、Bitmain創業者のJihan Wu氏は先日開催された「World Digital Mining Summit」で来年に控えたビットコイン半減期の個人的意見とBitmainが実施すべきことについて言及しています。

Jihan Wu氏は、個人的な意見として半減期によるビットコイン価格の上昇には保守的な意見を示すと説明した上で、少なくとも短期目線で見た場合には現在リリースされている旧型のASICでは利益を出すことは難しくなるだろうと推察しています。

Bitmainとしては、より効率的にマイニング利益を出すことが出来るASICの開発に注力する必要があると発言しており、マイナーは出来る限り最新のASIC機種を利用することで自社の利益獲得に繋がるだろうと説明しています。

 

 

まとめ:Bitmain社は今後もマイニングウェアのトップとして業界を牽引へ

 

本記事では、マイニングハードウェア(ASIC)の最大手「Bitmain」について企業情報から最新動向までをご紹介してきました。

ASIC企業としてはBitmain以外の企業も台頭してきてはいますが、まだまだBitmainのシェア率の高さは変わらないことが予想されます。

共同創設者の1人であり、Bitmain社のASIC開発に置いて重要人物であるMicree Zhan氏の解雇が今後のBitmain社の事業にどのように影響が出るのか、マイナーとしてはしっかりとBitmain社の最新情報を追っていく必要がありそうです。

 

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