今回は、マイニング産業の将来性についてのコラムになります。
2017年〜2018年前半にかけて仮想通貨業界の価格上昇により、多くの企業や個人がマイニング産業に参入しました。
仮想通貨のマイニング手法としてはPoWアルゴリズムを多くの仮想通貨が採用していることもあり、効率的に利益をあげようと思うと高価な機材が大量に必要なため、新たに機材を購入しマイニング産業に新規参入してきた方も多くいらっしゃいます。
しかし、2018年初旬をピークに仮想通貨市場全体が下落相場となっており、マイニング産業に参入してきた方達の中には、撤退の検討や引き払いを進めている方も多数存在します。
一方、マイニング事業には初期投資として多額の費用をかけているため撤退すべきか悩んでいる企業や個人の方も多いのではないでしょうか?
そこで、本記事では「マイニング産業の将来性について」マイニング事業者の現状と今後の展望を交えながらご紹介していきたいと思います。
2019年現在マイニング産業はビジネスとして成り立つのか?
まずマイニングを行なっている企業・個人問わず気になる点は、現在の仮想通貨の市場価値でマイニングをビジネスとして行なった場合に利益が出るのかといった点ではないでしょうか?
結論としては現時点の市場価値(1BTC=90万円前後)であれば、利益を出すことは可能です。
※マイニング対象として最も多いビットコイン(BTC)を対象としています。
ビジネスモデルとしては優秀?
上記で利益を出すことは可能とお伝えしましたが、ビジネスモデルとして優秀な部類に入るのでしょうか?
2019年10月時点でビットコイン(BTC)の価格が90万円を切っている現状では、ビジネスモデルとしては優秀とは言えないと判断出来ます。
特に日本国内でのマイニングは電気代の面から見ても特に厳しいと言わざるを得ません。
PoWのマイニング手法でコストが掛かる部分は「機材」と「電気代」が大半を占めるため、継続コストとしては「電気代」のみが負担となります。
電気代に関しては国毎に大きく価格差が異なり、日本は主要国の中では高くもなく安くもなくといったところです。
電気代の最安国としては「ベネズエラ」が頻繁に挙げられますが、ベネズエラではマイニングに対する厳しい規制が設定されており、簡単に事業拠点に展開するようなことは出来ません。
原油産出国を中心とした中央〜西アジアは電気代の安い国として多く名を連ねており、マイニング事業者も多く移転しているようですが、ベネズエラのように今後規制が掛かる可能性もあり、安定したビジネスとは呼べないのが現実です。
マイニング事業の将来性で考えた場合には、各国の規制に対する懸念があり少し不安と言わざるを得ません。
目安としてはビットコイン価格30万円代が最低ライン
マイニングにおいては初期費用を除いて、電気代が月に発掘出来るビットコイン価格よりも下回れば利益が出ることから、たびたび利益を上げるための最低ラインが計算されています。
大手金融機関であるJPモルガン社が出した調査結果によると、電気代の安い国でマイニングを行なった場合には2,400ドル(約26万円)で利益が出るとされています。
上記の数値はあくまで最低ラインであるため、初期費用の回収分や将来性を見越した際、ビットコイン価格が30万円代を切るようになると一気にマイニング事業が撤退し、仮想通貨市場価値にも響く恐れがあると指摘されています。
ビットコイン価格が50万円を切った際には、マイニング界隈でも不安の声が多く見られましたが、一時期に比べると1BTC=30万円を切ることはないのではとの予測から将来性にも期待が持てる状況に回復しつつあります。
PoWでのマイニング産業の将来性は?
2019年時点ではPoWでのマイニングが過半数を占めている状況は変わりませんが、イーサリアムのPoS移行を筆頭に多くの仮想通貨でPoSマイニングに移行する動きが出てきています。
マイニング事業者としては、PoSへの移行が進む中PoWが今後どのように発展または衰退していくのか気になるところかと思います。
ここからは様々な要因からPoWマイニングの将来性について推察していきたいと思います。
2020年に予定されているビットコイン半減期でコスト上昇?!
2020年にあるとされるビットコイン半減期ですが、ビットコインの発行量を調整するためのものであり、発行上限に達するまでの急激なインフレを防ぐための仕組みです。
マイニング事業者としてはこの半減期が非常に大きな意味合いを持ち、簡単に言ってしまうとマイニングでの報酬が半減するのと同じです。
現在のビットコインの市場価格でも採算を取ることが厳しいと感じているマイニング事業者も多く、現在の市場価値のまま半減期を迎えるとなると多くのビットコインマイナーが撤退を余儀なくされる可能性が高いと推察されています。
PoWマイニングで使用する膨大な電気使用量と環境面への配慮
PoWは性質上、基本的に24時間フル稼働で大量のコンピューターを稼働させマイニング作業を行います。
なるべく性能の良いコンピューターを多数用いることがPoWのマイニングにとっては有利となるため多くのコンピューターが投入されていますが、これらの計算式は仮想通貨のマイニングという作業以外に何の意味も持たないため、環境面においては害としかならないことが問題となっています。
環境面への問題が大きくなってくると現在電気代が安いことを理由に展開している国での規制が次々と実施され、マイニングを行うことを事実上禁止する動きが出てくることが推察されます。
今後の可能性としては各国規制に動くとの見方が強く、PoWマイニングとしての将来性という意味では少し暗雲が立ち込めています。
PoWで現在注目されているマイニング地域とは?
PoWでは、本記事でも何度も記している通り「電気代」をいかに安く抑えるかが最重要なポイントとなってきます。
マイニング地域として注目されているのは、ベネズエラやキューバなどの南アメリカ地域やイラン・カザフスタンなどの中央アジアが多くのマイニング事業者からの注目を集めています。
日本の電気代と比較すると4分の1や5分の1程度といった金額しか掛からないことから、いかにマイニング事業者が上述したような電気代の安い地域で事業を継続・発展させられるかが大きなポイントとなります。
中国のマイニング禁止の影響は?
中国のマイニングが本格的に禁止となった際には、中小マイニング事業者や個人マイナーにとってはプラスに働く可能性が高いと予想されています。
これまで中国がマイニング事業者としては最大手となっており、日本の3分の1と言われる中国国内の電気代の安さも影響して大規模なマイニングが行われていました。
しかし2019年に中国国内でのマイニングを政府が禁止する方針を発表したことにより、大手マイニング業社は国外へ事業拠点を移す動きを見せています。
例を挙げますとマイニング企業として最大手の中国企業Bitmain(ビットメイン)では既にアメリカへの進出方針を発表しており、複数の州でマイニングに特化した専用施設を開設する予定との情報が出てきています。
こういった大手マイニング企業は規制がかかる前から既に対策を打ち始めており、中国政府による規制はほとんど受けないのではないかとの見解が一般的になっています。
一方、大手マイニング企業のように施設の移転などが不可能なマイナーは、中国国内でのマイニング事業を廃止せざるをえない状況となります。
国外のマイナーとしては、これまで中国メーカーの独占状態となっていたマイニング市場の状況が緩和され、利益を出しやすい状況に働く可能性が高いと考えられています。
PoW将来性に大きな影響?!新しいサービス・技術は生まれているのか?
マイニング事業者ではPoWアルゴリズムを用いたマイニングが大半を占めますが、現在の仮想通貨市場の動きでは従来通りの方法で利益を上げることが難しいといった暗い意見が多く見られるようになってきています。
そこでPoWにおいて新しいサービス・技術はどういったものが提供されているのかご紹介していきたいと思います。
AIを用いたマイニング
まだまだ一般的とはなっていませんが、AIを用いて最新の情報から最も効率的にマイニング出来る仮想通貨を判断し、都度発掘する仮想通貨を切り替えながら最大効率でマイニングを行うシステムが開発されているようです。
Nicehashが提供しているサービスでも似たような機能が提供されていますが、ビットコインだけにこだわらず状況に応じて最適なアルトコインの発掘を自動で選択するため、より効率的に利益を上げることが可能となります。
クラウドマイニングサービスの台頭
クラウドマイニングサービスは、各個人がマイニングマシーンを購入するのは費用や場所などあらゆる面で現実的ではないため、サービスを提供している企業に投資することでマイニングの報酬を受け取ることが出来るサービスです。
残念ながらScamと呼ばれる詐欺サイトの存在も多いため、イマイチ信頼を勝ち取れていないサービス形態ではありますが、様々な分野でシェアリングエコノミーを用いたサービスが発展していることから、マイニング事業においてもクラウドマイニングのようなサービスが今後発展することが期待されています。
マイニングリグの機能向上もマイニング事業の将来性に大きく影響
マイニングリグを提供している各製造プロバイダーの技術発展も注目しておくべきところです。
最大手Bitmain社では2019年12月に「Antminer S17+」、現在最も勢いのあるInnoslicon社では2019年11月に「G32-1800」の発売を控えており、電力コストを削減するための技術競争が激化しパフォーマンスは向上しています。
直近ではニュージーランドの企業ビットハープが提供するマイニングリグ「Lyre Miner」「Harp Miner」のように個人が自宅でも簡単に取り組める高性能マイニング・ハードウェアの登場も話題となっています。
さいごに:最終的には仮想通貨の市場価格が全て
本記事では、マイニングの将来性について2019年現在の状況や今後の仮想通貨界隈の動向を独自の推察でご紹介してきました。
結論としては、マイニング産業の将来性については、仮想通貨の市場価値に今後期待を持ち投資出来るかが全てと言えるでしょう。
電気代や各国の規制によるマイニング環境の変化も重要ではありますが、何より仮想通貨市場全体で価値が下落してしまえばマイニング環境における対策は、元も子もなくなってしまいます。
マイニング産業の将来性に投資するかの判断は、長期的に見た仮想通貨の将来性を期待出来るかによって判断すべきであると考えられます。
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